2014年10月30日木曜日

vol.13 老いも若きも障がい者も健常者も、ピッチで1つに

10/30/2014

豪田ヨシオ部の記念すべき初イベントとして昨年実施した「ごちゃまぜフットサルフェスタ」が、ついに第2回目の開催となりました大型台風に邪魔されることもなく、スポーツの秋を皆で満喫した1日も、そろそろ暮れようとしています。大声を出して盛り上がったり、ニコニコ笑う顔が並ぶ中、なんとなんとフットサルコートのすみっこで西園寺が泣いています。 しかも、冷静さが売りの彼女らしからぬ号泣……。

うぇーん、うぇーん! ……チーン……うぇーん!
「こらこら、泣くならもっと地味に泣け。あと、泣いてるくせに鼻をかむ時だけ冷静な顔でキョロキョロするな。面白いけど(プッ)」
「豪田さん、声をかけるならまず『どうしたの?なんで泣いてるの?』でしょ(苦笑)」
「………………」
「ん?」
「………………………………」
「ん?ん?」
「………………………………………………チーン」
「鼻かよ!」

ずっこけたやりとりをそのまま書いているとキリがないので、西園寺が泣いた理由をさっさとお伝えします。要するに彼女は感動して、こらえきれずに泣いていたのでした。じゃあ、何に感動したのかというと、実際にフットサルをプレーしてみて初めてわかった「ある感覚」に胸を打たれていたのです。そう、西園寺は今回、運営スタッフでありつつも参加チームの1選手として試合に出ていたのです。

「去年は私、裏方担当で走り回っていたから、体験イベントには参加したけれど、試合は見ていただけなんです」
「そうだね。だから今回は絶対試合に出たい!と言ってたよね」
西園寺「私、こう見えても簡単に見知らぬ人と親しくなれるタイプじゃないんです」
「知ってる、知ってる」
「(キッ!)」
「豪田さん! で、西園寺さん、試合に出てみてどうだったの?」
「サッカーやフットサルなんて普段やらないから、もうそれだけでオドオドしちゃったし、試合が始まったらどの人がデフ(聴覚障がい)でどの人がCP(脳性麻痺)かわからなくなって、『声を出すべきなのかな、そうじゃなくて身ぶり手ぶりをするべきなのかな』なんて戸惑っているうちにボールが行ったり来たりして……」

第1回フェスタの記事を読んでいない人にはわかりづらいかもしれないので、あらためて「ごちゃまぜフットサルフェスタ」の説明をします。この大会には、障がい者サッカーの主要4団体すべてが正式に後援として参加しています。

日本ブラインドサッカー協会(JBFA)は、視覚に障がいを持つ人たちがサッカーを楽しむための団体。
日本脳性麻痺7人制サッカー協会(JCPFA)は、脳性麻痺などが原因となって身体に麻痺を持つ人たち(CP)が独自ルールの7人制サッカーに親しんでいくための団体。
日本ろう者サッカー協会(JDFA)は、聴覚に障がいを持つ人たち(デフ)が行っているデフサッカーやフットサルの発展を目指している団体。
日本アンプティサッカー協会(JAFA)は、主に上肢、下肢の切断障がいを持った選手がプレーするアンプティサッカーという競技の普及・発展を目指す団体。
どんな障がいを持っていたって、スポーツは楽しい!……そういう志をともにする4団体です。

「それならば、健常者も一緒に輪の中に入っていって、みんな“ごちゃまぜ”でフットサルをしましょうよ!」と呼びかけ、活動を続けている任意団体「メリメロ(Meli Meloはフランス語で“ごちゃまぜ”という意味)」と豪田ヨシオ部とが出会ったことがそもそものきっかけでした。そうして始まったのが「ごちゃまぜフットサルフェスタ」というわけです。

だから大会当日は、参加者全員がランダムに選ばれた人たちとチームを組んでいきます。どのチームにも必ず、子ども、大人、男性、女性、健常者、障がい者、サッカー経験者、初心者がいるようにして、「はじめまして。一緒にがんばりましょう!」からスタート。チームメートになることで、わかり合い、協力し合い、ともに楽しんでいくことをコンセプトにしています。

もちろん、西園寺ばかりでなく、初めて参加した人は誰だって戸惑うのですが、メリメロのイベントに参加したことのある人たちや、各団体に所属するチームで選手として活動している人たちも大勢います。「障がいの有無なんて関係ない」ということを知っている人たちと過ごすうちに、戸惑いも消えていくんです。西園寺もどうやらそうだったようです。

「私は全然ヘタなんだけど、そんな私がボールをもらうと皆が必ず見ていてくれて、目でいろいろ語りかけてくれたり、身ぶり手ぶりで『こっち、こっち』って教えてくれたり……うぇーん、思い出じだらまだ感動じでぎだー
「西園寺くん、濁点つけすぎ」
「豪田さん、くだらない突っ込みで遊びすぎ」

西園寺がどうやら言いたかったのは、「つながる」ってことの素晴らしさ。たくさんの時間を使い、たくさんの言葉を使ってコミュニケーションしなくても、スポーツはアイコンタクトや動作や空気感で人と人とをつないでくれます。ほんの数分の試合中に皆がつながっていきます。試合に参加した人だけが共有できる「いま私たちは、どんどん1つになっている」という感覚を初めて経験した。だから彼女は感動したんです。

さてさて、チーム対抗戦がひととおり進むと、昨年同様、体験イベントの時間が来ました。2面あるフットサルコートを使って、ブラインドサッカーとアンプティサッカーをそれぞれ実体験していきます。

たとえばブラインドサッカーでは、2人1組になり、片方がアイマスクを着けた状態でのパス交換。ブラインドサッカー用のボールは中に鈴が入れられているので、位置を音で知ることが出来ます。そしてパートナーは手を叩いたり、声をかけたりして自分の位置を知らせます。そのコンビネーションがうまくいって、上手にパスが通ればいいのですが、そう簡単にはうまくいかない。今回も参加してくれた日本ブラインドサッカー協会の選手の模範演技がどれだけスゴイのか、実感しました。

日本アンプティサッカー協会からも、メキシコ遠征が近い時期なのに、日本代表クラスの選手が参加してくれました。体験参加者はクラッチと呼ばれる医療用のツエを両手に持ち、これと片足とで走ったり、蹴ったりを実体験。やっぱり、やってみてわかったのは、選手たちがどれほどハイレベルな技術の持ち主なのか、ということ。

「去年も参加したのに、やっぱりうまくいきませんでした」
「そりゃそうだ。どんなスポーツだって、最初から上手にできやしない」
「でも、他のスポーツと同じで、ヘタはヘタなりに楽しいんですよね」

と、ここで去年にはなかったエキシビジョン・マッチ、つまり特別試合が始まりました。イベントを仕切ってくれていたメリメロの広重さんが試合出場希望者を募ります。

広重さん「今から、アンプティサッカー現役選手チームと、対戦希望者チームで試合をします。出たい人は集まってくださ〜い」

実はこの日、ものすごい人が参加していたんです。エンヒッキ・松茂良・ジアスさんは、テレビやCMにも登場したアンプティサッカーの伝道師。日系ブラジル人として史上初めてアンプティサッカーのブラジル代表チームにも選ばれていた名選手なのですが、6年前に来日してアンプティサッカーというものの存在や面白さを全国に伝えていき、日本のチームが世界的大会に出場できるところまで育てていった立役者。この日もスーパーなプレーを次々に見せてくれていました。

「キャー!どうしよう、出たい、出たい。ヒッキさん(エンヒッキさんの愛称です)と試合したい!」
広重さん「じゃあ、希望者多数なので10分だけで交代ですけど出ちゃいましょうか」

ヒッキさんだけでなく、アンプティ・チームのテクニックときたら完全にプロレベル。そりゃあそうです、日本代表クラスなんですから。試合は開始からほんの数分で4-0と一方的展開。アンプティ・チームは間違いなく手加減していますが、レベルが違います。でも楽しいわけです。普段からサッカーやフットサルを楽しんでいる子どもたちや若者たちを筆頭に、皆がキラキラした目でプレーを見て、歓声をあげます。目の前で天才サッカー選手のヒッキさんのプレーを見られるんだから当然ですね。大人が3人がかりで囲んでもドリブルで楽々抜け出しちゃうし、コートの端からロングシュートを放ったら、小さなフットサル用のゴールに吸い込まれていくし……。とうとう最後はレフェリーを務めていた広重さんまでがガマンできずに……

広重さん「あ、あの、オレも出ていいっすか? いいっすよね。誰か審判代わって!」

そして、試合後……

「黒柴さん!見てみて!キラーン」
「おー、ヒッキさんとツーショットの記念写真だね。よかったねえ」
「うん!生きててよかったぁ!(ウルウル、ウルウル)」
「ちょっ、たんま、たんま。もう泣くのはナシ。最後の試合が始まりますよ!」

というわけで、今回も大成功!の「ごちゃまぜフットサル」でした。もちろん、第3回もやります! 日程が決まり次第、お知らせしますから楽しみにしていてください。今回参加できなかった皆さんも、次はぜひ参加して、試合に出てみてください。西園寺の様子が決して大げさなものじゃなかったんだってことが、わかるはずですから。

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