「どうしたの、西園寺さん? ボンヤリしてるけど考え事?」 「ボンヤリ? そんなことはありません(キッ)。 ただ秋だなあ、と」 「ああ、なるほど。 季節を感じてマッタリ?」 「そうそう。秋はゆったり、のんびりしたいじゃ……」 「ワッ!!」 「キャッ!…………な、なんで、驚かせるんですか!」 「ハハハ、油断は禁物だぞ、という教訓だよ(笑)」 「キィーッ! 訴えますよ! 大人げないマネして!」 いつも通り、豪田が西園寺に説教される展開です。 でもまあ、豪田には豪田なりの言い分がありました。 最初から口頭で真面目に説明できないあたりも、いつも通りなのですが。 「秋は防災の季節だって知ってるか? 知らなかったろ?」 「知ってますよ! それが今のくだらない行為と何か関係あるんですか!」 「防災を考える時季だってことはみんな知ってますよ。 9月1日の"防災の日"に社内で避難訓練したばかりじゃないですか」 「ま、豪田さんは、ウソ臭い商談だか何だかを理由にサボってましたけどねぇ」 「え? 避難訓練? 知らなかった(きょとん)」 「はぁ~~(ゲンナリ)」 「で? 何をおっしゃりたかったのでしょうか?(キッ)」 3人の会話を追いかけていると、どんどん話が長くなるので、かいつまんで豪田の言いたかったことを書きます。 今回、豪田は防災に関わる参加型イベントを部活でやろう、と考えているのです。 きっかけは居酒屋で騒いでいるうちに意気投合した大学生たちが、たまたま災害対策の活動をやっていたことから。 「地域や学校や会社などでは、避難訓練や防災に関わる催しが開かれたりすることもありますが、せいぜい年に1度とか、ごく限られた機会しかない。それでは日常生活の中で災害に備える意識がついつい忘れられてしまうと思うんです」という大学生たちの熱い言葉に強く動かされたのでした。 「いつも思いますけど、居酒屋で騒いでいたら知り合った……というパターン多いですよね、豪田さん(苦笑)」 「で? な・ん・で・私を驚かせたんですか?」 「だからさ、油断しちゃいけないよ、というね、そういうコンセプトで、ね(汗) 「はぁ? ユダン~? コンセプト~?(鬼の形相)」 「考えてみたら、東日本大震災から2年半も経っていますよね。 それなのに、被災地から離れた場所にいる僕らは、かなり意識が薄れてきている気もします。 油断……あるような気がしてきました」 「大震災の直後は災害について色々考えたり行動しようとしたけど、震災直後の自分のうろたえぶりといったらなかったな。」 「たしかに。 世界では、あの震災時の日本の落ち着きぶりを評価してくれているところもあるけれど、正直なところ、僕も周りも、ただオロオロしていました。 企業としても適切な対応をしていたところと、そうじゃないところとでハッキリ分かれましたよね」...